「あたし、未婚の母なんだよね。」
「え?」
それはあまりに唐突すぎて、心構えも出来てない俺にはその言葉を上手く頭の中で処理出来ない。
「逃げたんだ、父親。」
……マジかよ。
カチ、とライターで煙草に火を付けた世里菜が頬杖を付いて俺に笑い掛けた。
「想像してたイメージと違う?」
「い、いや…。」
ただ、驚いた。
確かに、店で会う世里菜と今目の前に居る彼女は少し違和感があった。
だけど、瞳の輝きは初めて会ったあの日と変わらない。
そんな俺に、世里菜はふっと鼻で笑うと
「男って本当バカ。ちょっと優しく微笑んであげれば、勘違いしてさ。」
とくわえ煙草のままアイスコーヒーにミルクを混ぜる。
「だからあの仕事は楽。大抵バカな男しか来ないもの。」

