ふふ、と笑った彼女は
いつもアップにしてる髪の毛を揺らして笑った。
太陽に照らされる世里菜の茶髪。
「…ヒロくん、今時間大丈夫?」
彼女の言葉に自分の意識が他にある事に気が付いた俺は
「え?…あぁ、大丈夫だけど…。」
慌てて返事をした。
「ちょっと、いいかな。」
路地裏の小さな喫茶店。
ビルの間に隠れるようにある店内は、陽の光があまり入らずに
だけどそれがまた、この店の雰囲気を醸し出している。
静かな店内で、ベビーカーに座った赤ん坊の声だけが響き
たまに通り過ぎる人たちが視界の端に見えた。
冴えない店員が
「お待たせしました。」とやる気なく二人の前にアイスコーヒーを置く。
世里菜は一度だけ子供の頭を撫でると
顔を上げて俺に視線を合わせた。

