「名前、何て言うの?」
「な、名前?」
「そう、あなたの名前。」
今にも肩が触れそうな距離。
心臓が、壊れるんじゃねぇかって思った。
「こいつはねー、ヒロって言うの。ついでに俺は俊介!」
聞いていたのか、俊介が勝手に話に割り込んでくる。
「何でお前が答えんだよ!」
「ヒロが答えねぇからじゃんっ!」
ぎゃあぎゃあと言い合う俺たちに、世里菜はふふ、と笑ってみせた。
「仲良いんですね。」
「いや、そうゆんじゃねぇから。ただの腐れ縁。」
あー、やっと普通に喋れた。
柄にもなく緊張してた俺はようやく強張った体が落ち着いていくのがわかった。
それから、世里菜と会話を交わして彼女の事を色々知る事が出来た。
東京にはつい最近上京してきたばかりだとか
お酒は強いとか、そんな他愛もない話。
なのに今まで一度も楽しいと思えなかったキャバクラが今日は何故か楽しくて。
自分でも、それがどうしてなのかはわからなかったけど
また会いてぇな、なんて思ったりしてしまったんだ。

