続きを待っても
一向にその唇は開くことはなく。
椅子に斜めに腰かけて、
自分の持ってきた書籍を
読み始めた。

えっと・・・
利用してもいいって意味の
『ああ』でいいのかな?

彼は長い指で
本のページをめくる
綺麗な指だなぁと
素直にうらやましい。
「なに?」
低い声に我に帰る
見惚れてたようで
彼は怪訝そうにこちらを見ている。
「あ・・いえ・・」
そう言ってひとまず
本を探すことにする。

いや、しかし
男性なのに神秘的な人だな・・・
あ、そうだ!

心を覗いてみる。

面倒くさい
と思ってるみたいだけど、
私に対しての不の感情は
今のところ見当たらない。

花嫁選定試験で
他国の人が行き来してるのは
城内ではあたりまえだし、
侍女がこの時間出歩くのも
不思議はないと判断して
くれているのだろう。

疑いや不信感はなかった。

とりあえず、ここの利用に関しては
大丈夫みたいだ。
安心して本が探せそうだ。

琥珀の空間に沈む物語を探す
ワクワクが私を高揚させた・・・