王子も彼を疑ったり
警戒しているそぶりはなかった。

あれだけの悪意をどうやって
隠せているのか・・・

いや・・・隠していたから
あの質量の悪意が見えたのだ・・・
どこにも発散されず
溜まって濃縮したどす黒い闇
・・・どうしたら・・・
・・・誰にうち明けたら・・・

冷静に眼鏡を直す右手
この国の第二王子もまた魔術師だった
・・・彼だったら・・・

なぜ、最初に彼が浮かぶの!!
最初に彼を浮かべてしまった
自分に混乱し首を振る

そのしぐさを見たハトナの眉間が
さらに深く皺を刻む

部屋に連れ戻され、
布団に入るまで
その皺は消える事がなかった。

布団を肩までしっかりかけて、
肩口が冷えないようにと布団を抑える
「ゆっくりおやすみください。
 夕食のお支度のときに
 起こしに参ります」
すこし、冷静な口調のハトナだけど、
行動が過保護じゃないかな?
無理をした私を心配してくれている。
まるで子供をしかるみたいな優しさを感じる。
いろいろと張っていた糸が切れた・・・

「ありがとうね・・・はと・・な・・・」
最後まで言えたかな?
急速に襲った睡魔に
やっと私は意識を手渡した。