と後ろから心配そうな
ハトナの声がかかる

「クラァス様?」
「あぁ・・・ハトナ・・・
 寝不足だったから、ちょっとね」
そういうと、タオルを渡しながら
ハトナは眉間に皺を寄せて
「夕食まで時間があります。
 お部屋でお休みください」
その言い方は、
有無を言わせない響きがあり
私を心配してくれているのが
分かるから素直に従う。

でも、これだけは聞いておかなきゃ・・・
「さっき、扉の前で王子と話していた方は
 どなたかしら?
 親しそうにされていたのに、私
 ・・・覚えてなくて」
怪訝になる響きをハトナは
初対面の人への警戒ととってくれたのか
私の心配をぬぐうような
優しい響きをもって答えた
「宮廷魔術師の
 ジフェル様でいらっしゃいますよ。
 先日まで各国へ帰還した姫への
 事後処理にあたっておられて、
 確かに皆様へのご紹介が
 遅れていたと思います。」
本日の夕食でご紹介されると思いますよ。
といったハトナに
彼を悪く思う気持ちは
ひとかけらも含まれていなかった。