部屋について荷物を解きながら
今回の彼女のお土産を
そっと机の上においた時

部屋の扉が元気に開く
「おねぇちゃん!!」
まるで転がるように飛び込んできたのは
「ベル!」
妹のベェールだった
私がクララで妹はベル
決して長くない名前を
とにかく縮めるのが
この国の愛称の付け方。

「お父様もお母様もお待ちかねよ。
 早く元気な顔を見せてって」
十分姉の気持ちを分かったうえで
、誰よりも明るく微笑みかける妹
私が今一番欲しくない
同情は一切出さない
「わかったわ、荷ほどきしたら
 すぐに行くからまってて」
うなずいた妹はしかし部屋から出ない
「なに?」
と聞くと
右手をだして
「お土産は?」
と小首をかしげる

「いい年こいて
 さっそくお土産の打診なの?」
すると今度はぷぅっと頬を膨らませて
「ルミナーテにはいつもあるけど
 私にはいつもないじゃない!」
本心と私を元気づけようとする気持ち
心地よい会話
急速に瘡蓋の下の傷が
癒えていくのが分かる
「はいはい、ちゃんと用意してあるから
 夕食後に取りにきな」
「わーい、今夜はおねぇちゃんと一緒に
 寝るからね♪」
有無をいわさず約束をして
片目だけを器用に閉じる
とその時、廊下から
「ベェールさまぁ!」
と怒りに満ちたルミナーテの声が
聞こえてきた。