下がろうとしたハトナを引き留め
もう一通の手紙を渡す。

そして、いかにも何ともない
という風にサラっと伝える。

「先ほどの雨の時に
 たまたま通りかかった
 ラル王子に借りたあのローブ、
 ハトナから返却してもらって
 いいかしら?
 お礼に一筆書いておいたので
 これも一緒に」

中身は至ってシンプルに
「ありがとうございました」
とだけ書いた。

明日が結果発表なら
直接返さなくても
失礼にはならないだろうし、
なにより彼が
私には会いたくないだろう。

ローブと手紙をもってハトナが下がる

いろいろ考えてしまうと
眠れなくなりそうなので、
伝記を読む・・・
もしかして最後の夜になるかもしれない。
読み終わればいいな
と思いながら頁をめくる。

絵本のように挿絵が多いその本は
思いのほか早く
読み終わってしまった。