書庫の中の時計だろうか
夜が深くなった事を告げる鐘の音が
ゆっくり聞こえた。

「うわ、こんな時間!」
私はあわててさっき選んだ伝記と
一番上にあった物語をもつ
そして彼に
「これ借ります。ありがとう」
そういって慌ただしく書庫を出る
彼が扉の前にたって見送ってくれる
それに手を振って走り出す。

玉砂利の上を走るもんだから
派手に鳴る。

でもそれは、
よい出会いと楽しい時間に対する
私の心のウキウキを
代弁してくれてるようで
あくびする見張りの兵士に
驚かれながら
上機嫌で部屋に帰り着いたのだった。

さて寝間着に着替えて本をひらく
そこで、彼の知的な瞳を思い出す。
「あ!」
名前を聞くのを
忘れていたのに気が付いた・・・

でも、またあの書庫にいけば
あえると思うと
「また、その時に聞けばいいや」
そう思った。

そして私は
心地よい眠気に包まれ
すーっと夢の世界に入っていった・・・