「なっちゃん、席案内するわ、鞄預かります」



風間さんは、私の荷物をレセプションの藤堂さんに渡すと席に案内してくれた


前を歩く風間さんは毎回、階段や段差で一つ一つ丁寧に「気をつけて」と声をかけてくれる。


風間さんの服装は、黒のジャケットを肘の少し下まで捲り上げ、白のパンツに革靴


会社の規定だろう、他のスタッフも落ち着いた大人な雰囲気の服装をしている



もう三年通っているけど、やっぱりこのお店の雰囲気が好き。


席に着くと、脚にそっと膝掛けをかけてくれて、風間さんが横で私と目線の高さをあわせる為かひざを突いて、鏡越しに会話をした


「改めて、いらっしゃいませ。いつもありがとうございます」

「どうしたんですか、いきなり」

笑いながら言うと、風間さんは立ち上がり「親しき仲にも礼儀あり」と笑いながら言った


「今日はカラーやっけ?」

「うん、根元のリタッチと、あとはハイライトの色味が出て来すぎたからそれ押さえてほしいです」

「リタッチと、…トナー…ね。りょうかいっ」

鏡越しに私がメニューを言うと風間さんは、カルテと伝票を見て、そのあと笑顔を見せた