涙が伝った。
「あの子を殺すのは……あの子は……」
(絶対にひとりにさせないって、きめていたのに。)
悔しさで唇を噛み締める。
すると、頭を叩かれた。
否、この叩かれ方はサタンが撫でたつもりの時の叩き方だ。
「貴様のせいではない。」
そう言わなければタナトスは自身を許せないようだった。
サタンは言う。
「俺が唆した。」
そう嘘を吐けば、憎んで生きるだろう。
いいや。
憎まれでもしなければ、自分が生きられない。
彼女をひとりにしたことへ罰が欲しかった。
そして、輪廻から外し、ひとりにさせた。
ひとりにさせないという約束を破った。
それを、憎んで欲しかった。
「————っ。……貴方を、許さない。」
タナトスはサタンを掴む。
「何度でも失い、何度でも死んで、何度でも絶望するがいいわ。」
そう言うと地獄界の門へ行った。
「……あぁ。」
サタンは目を伏せて去る。

——時は移ろい、人間界へ霧散した宝石は罪人や神により回収されていた。
夢魔が増数し、エクソシストの仕事が増えたが対処できないほどではなくなった。
ミューの力が無くなったことで混乱はあったが、現在は情報処理班として活動している。
「おい。」
レイはぶっきらぼうに声をかける。
「あぁ。おかえり。」
やつれたような笑顔でミューは応えた。
「何だよ。そのブサイク面は。」
「ひどいなぁ。」
ミューは苦笑する。
「じゃあ、何て言えばいい。クソ面か?」
「ブサイクでいいよ。」
そう言うとよろめきながら立ち上がった。
「食堂でも行こうか。」
「……ん。」
レイはつんと澄まし顔をしてミューを見た。
そして、共に食事をとる。
「何日ぶりの飯だ?」
「いきなりその質問?毎日食べてるよ。一応。」
「どうせ、握り飯程度だろ?そんなんだから、チビなんだよ。」
「……」
ミューは黙り込んでしまった。
「身長は、仕方ないでしょ。」
口を尖らせて言うところから、本人も気にしていたらしい。
悪いことをしたなと流石のレイも思ってしまう。
「珍しいな。」
偉そうな口ぶりで現れたのは陸奥だ。
「仕事は終わったのか?」
「順調だよ。」
固い口ぶりで言う陸奥に柔らかく答えた。
「それは何よりだが、栄養はしっかりとれ。」
陸奥は睨む。
「てめぇはこいつのかーちゃんか。」
「黙れ。吾輩に言わせずともお前が何とか言ってやるべきだろう。」
レイに陸奥が言い返す。