「その時、悪魔が現れた。悪魔は神様と戦い、今回みたいに力が分散し、歪みが発生した。……神様は、酷く疲弊して、私が力を使っても復活は時間がかかった。その間に、大罪人が諍った。歪みは大きくなり、天空宮は危機に晒された。そこで、神様は大罪人を“再構築”したの。」
「どういう意味だ。」
「私達に死はないの。唯、光と共に砕けて舞う。そして、仕える者として、神によって光が集められ、構築される。許されない者は、魂の輪廻から外れ、消える。」
陸奥にゼロが答える。
「……夢魔には血液がない。“夢魔は人間に取り付かない限りは体液がない化物”と、貴方達は言うみたいだね。私達もだよ。再構築された者には体液がない。夢魔は悪魔の精神であり、化身であり、再構築されるものなの。」
「おい、じゃあ、こいつは何なんだよ。」
レイはタナトスを見る。
「タナトスは死んで間もない……まぁ、人間からしたら長いけど。私達と違って再構築されてない。言ってみれば、赤ん坊みたいなものだよ。」
「うっさいわね。精神未熟。」
「うぅっ……」
タナトスにゼロが泣きそうになる。
「それに、神の許しを得ていない。」
「なるほど、それであんなに焦ってた訳か。」
「消えるから、ね。」
ゼロにレイとミューが納得した。
「神に仕え、罪を永遠に紡ぐ者。鎖で罪人を黄泉へ誘う。」
タナトスはニヤリと笑む。
「天空宮が崩壊し、再構築される時、私は全てを誘い、滅ぶ。それが役目よ。」
「そんなの、いやだ。」
ゼロは泣く。
「全てを破壊するからには、自分も消える覚悟がなければならないわ。」
「タナトス……」
ゼロは何か問いたげに見つめる。
“許しを得ればいいのに”
そう言いたそうだ。
「死んでいる者が何を今更。」
タナトスは吐き捨てるように言った。
「でも、そうならない為に、悪魔の力を滅するの。」
「全てを滅したところで、悪魔本体は居るから、弱めることにしかならないのだけれどね。」
ゼロにタナトスが付け加えた。
「悪魔本体も滅すればいいのではないか。」
「いいえ。神さえも、殺せない存在だわ。出来はしない。」
タナトスは陸奥に言う。
「神は無能だな。」
陸奥は嘲笑した。
「なっ!」
「貴方に出来るならやってみなさい。」
怒るゼロを片手で牽制して、静かに言う。
「死んだら、しっかり送ってあげる。」
「ふん、不要だ。」
タナトスに陸奥が取り澄ました。