「俺を殺してみろ。そしたら、そこから出れるだろうよ。」
そう言うと、女性を見下ろす。
「まだやるか?」
「やめておけ。」
「あぁ?」
背後から近付く人間にレイは目を遣る。
「実験に支障が出る。」
藍畑だと、目で認識して、レイは眉を寄せた。
「行くぞ。」
女性を連れて藍畑は去った。
「……あのひとは、ひどいことされるの?」
「そうかもな。」
悲しそうなゼロにサタンは冷静だ。
「私達は救済者ではないのよ。」
「わかってる。」
泣き出しそうなゼロに“手出し無用よ”とタナトスが諌めた。

暫くすると、冷たい目の女性が来た。
「吾輩は陸奥葵という。今回の指令だ。」
女性は、六人を見て言う。
「世話係は私が請け負っているから大丈夫と思うけど。」
「黙れ。あんただけでは心許ない。」
レヴィに陸奥は言う。
「七人でうろうろするのは目立ちすぎるわよ。」
「知っている。」
陸奥はそう言って全員を見た。
「今回は村に起きた怪奇現象についてだ。村へ全員で向かう。その後、二手に分れる。」
「俺らも頭数に入ってんのか。」
「みたいだね。」
レイにミューが笑う。
「怪奇現象は、悪魔……夢魔、と言うべきか。その大量発生及び、村人が全て死亡していることだ。」
陸奥はゼロやタナトスを見て言い直した。
「夢魔による殺害にしては、酷い腐敗だ。しかも、食料が全て無くなっている。夢魔に関しては討伐部隊が討伐した。しかし、その被害が隣村まで来ている。討伐部隊が隣村を警護するも、手に負えない状況だ。」
淡々と状況説明をする。
「村外れの屋敷が原因らしいとは突き止めてある。しかし、その屋敷に近寄れた者は居ない。」
「……」
タナトスの脳裏に悪魔ともう一人が浮かぶ。
「“ベルゼブブ”」
「おじさんのこと?」
ゼロは首を傾げた。
「“腐敗”の能力を持ち、全てを喰らう者。もしかすると、その器か……あるいは、私達がこちらに来たことによる歪みで降りて行ったか。」
「いずれにせよ、倒すべきだ。」
「そうね。」
サタンにタナトスは頷く。
「現地に急ぐ。支度をし、駅へ向かえ。」
陸奥はそう言って踵を返す。
「……あまり、好きじゃないのよね。あの人。」
レヴィはボソッと呟いた。

駅には既に陸奥が待っていた。
「乗るぞ。」
丁度、来た列車に向かう。
「まってよぉおおお!!」
最後尾に居たゼロが慌てて走る。