サタンは気付いたが、敢えて黙った。
「タナトスぅー!」
ゼロが膨れる。
「煩い。」
タナトスは不機嫌だ。
「にあう?にあうー??」
「黙ってちょうだい。」
「タナトスも、かわいー!」
くるくると回りながら制服を見せびらかす。
「ふふふっ」
クスクスと笑い声がした。
「こんにちは。」
見れば女性が居る。
「私は今日から貴方達の監視役よ。……レヴィアタン。よろしく。」
「レヴィアタン?」
タナトスは睨むように見た。
「そうよ。」
そう言うと、首飾りを取り出す。
蛇と林檎のモチーフだ。
「……嫉妬深き大罪人。」
クスクスと笑みながら言った。
「貴方達とおんなじよ。」
「貴方も、“罪人”なの?」
「そう。」
ゼロにレヴィアタンは言う。
「名も無き私に名前を与えてくれた。だから、代わりに罪を負う。」
そう言うとにっこり笑む。
「1度死んでいる人間。……その際に、名前を捨てることを代償に同じ姿で転生した。名前に関することは記憶にない。」
タナトスは資料を記憶から取り出すように言う。
「レヴィアタンが同じ名前を貴方にあげたのね。」
「そう。」
レヴィアタンは言う。
「紛らわしいと感じるなら、レヴィ、と呼んでちょうだい?」
「そうするわ。罪人の名前をこの世界で聞くのはうんざりよ。」
「随分ね。」
そう言うと、レヴィアタンは笑った。
罪人と区別を付けたいのは、自分が罪人であるからだということは口にせず、態度で示す。
「人間なんかと同じじゃないわ。」
タナトスはどこか不機嫌そうに言った。
「元は同じでしょうに。」
「喧嘩なら他所で売った方がいいわよ。」
刺々しく言い返した。
「言葉が過ぎる。タナトス。」
サタンはそう言うとタナトスの頭にぽふっと手を置いた。
「…………なによ。」
そう呟いて口を尖らせる。

少しの間、沈黙が流れた。
「大変だ!」
研究員の叫びで沈黙が消える。
「何?」
レヴィは眉を寄せる。
「また、“アレ”が脱走した!!」
「はぁ!?」
ミューとレイも眉を寄せた。
「あんの、クソムシが!」
レイは苛立つ。
「あの子を止めれるのは君以外にいないよ。」
「うるせぇ。あんたも出来るだろうが。」
「やだなぁ。とんでもない。」
ミューはにこにこしている。
「ッチ。」
レイは舌打ちをした。
「なぁに?あれってなぁに?」
「とってもこわ〜いお姉さんさ。」
「こわいの?」