「利害が釣り合う状況である限りは。」
タナトスははっきり言った。
「——私は、天界で悪魔と戦闘した。悪魔は普段、人間の悪夢を食べて過ごすわ。」
そうして話を切り出す。
「悪魔を倒すのは神でも不可能。良くて相打ち。だから、私は力を疲弊させ、天界に危害を加えないようにすることにした。結果、悪魔の力の一部が人間の至るところに四散してしまった。」
“不覚だわ”と苛立つ。
「夢魔程度なら、エクソシストに任せるし、強大なものなら害が出る前に天界から見つけて滅するつもりだった。予想以上に多くが四散したようね。」
「だが、こうなった以上は」
「事は一刻を争うわ。」
タナトスは藍畑を見る。
「発見に協力して。」
「……いいだろう。」
藍畑はニヤリと笑んだ。
(人間など……)
タナトスは不快そうだ。
「利害関係……か。嫌いじゃない。」
藍畑は言う。
「そう。」
タナトスは藍畑を鼻で笑う。
「それで、私はどうするべきかしら?」
「お前達はこの研究所の監視下に置く。」
「“達”?」
タナトスは怪訝そうだ。
「泣き虫やサタンは無関係と思うけど?」
「その方がお前は動きやすいはずだ。」
「確かに。行動を共に出来るから、一理あるわ。でも」
「皆まで言うな。研究対象はあくまでお前だ。その二人とは利害関係にないからな。……これで、文句はないな?」
藍畑の言葉にタナトスは何も返さずに承諾した。
「こちらがこれだけ譲歩しているんだ。勝手は許さない。」
「解ったわ。けど、機会あれば私達はさっさと帰るわよ。」
「データがあればいい。好きに帰るといい。」
タナトスは企むように笑う。
藍畑は“人間界にいる限り逃げられない”と視線で語る。
「タナトスにひどいことしたら、怒るよ!」
ゼロは頬を膨らませる。
「余計なお世話よ。」
タナトスはつんとそっぽを向いた。
「教団には伝えておく。今日明日にでも制服は届くだろう。」
「要らないわ。どうせ、直ぐに居なくなるわよ。」
「敵と思われては鬱陶しい。」
「……好きにしたら?」
そう言うと諦めたように布団へ潜り込む。
「では。」
藍畑はそう言うと去った。
数日が経ち、新しく制服が届いた。
それまでは、血液や細胞の分析ばかりが続いた。
「時間がないというのに。」
タナトスは焦る。
じりじりと胸が痛む。
(この痛みは、何?)
苦しさを悟られないのに必死だ。
タナトスははっきり言った。
「——私は、天界で悪魔と戦闘した。悪魔は普段、人間の悪夢を食べて過ごすわ。」
そうして話を切り出す。
「悪魔を倒すのは神でも不可能。良くて相打ち。だから、私は力を疲弊させ、天界に危害を加えないようにすることにした。結果、悪魔の力の一部が人間の至るところに四散してしまった。」
“不覚だわ”と苛立つ。
「夢魔程度なら、エクソシストに任せるし、強大なものなら害が出る前に天界から見つけて滅するつもりだった。予想以上に多くが四散したようね。」
「だが、こうなった以上は」
「事は一刻を争うわ。」
タナトスは藍畑を見る。
「発見に協力して。」
「……いいだろう。」
藍畑はニヤリと笑んだ。
(人間など……)
タナトスは不快そうだ。
「利害関係……か。嫌いじゃない。」
藍畑は言う。
「そう。」
タナトスは藍畑を鼻で笑う。
「それで、私はどうするべきかしら?」
「お前達はこの研究所の監視下に置く。」
「“達”?」
タナトスは怪訝そうだ。
「泣き虫やサタンは無関係と思うけど?」
「その方がお前は動きやすいはずだ。」
「確かに。行動を共に出来るから、一理あるわ。でも」
「皆まで言うな。研究対象はあくまでお前だ。その二人とは利害関係にないからな。……これで、文句はないな?」
藍畑の言葉にタナトスは何も返さずに承諾した。
「こちらがこれだけ譲歩しているんだ。勝手は許さない。」
「解ったわ。けど、機会あれば私達はさっさと帰るわよ。」
「データがあればいい。好きに帰るといい。」
タナトスは企むように笑う。
藍畑は“人間界にいる限り逃げられない”と視線で語る。
「タナトスにひどいことしたら、怒るよ!」
ゼロは頬を膨らませる。
「余計なお世話よ。」
タナトスはつんとそっぽを向いた。
「教団には伝えておく。今日明日にでも制服は届くだろう。」
「要らないわ。どうせ、直ぐに居なくなるわよ。」
「敵と思われては鬱陶しい。」
「……好きにしたら?」
そう言うと諦めたように布団へ潜り込む。
「では。」
藍畑はそう言うと去った。
数日が経ち、新しく制服が届いた。
それまでは、血液や細胞の分析ばかりが続いた。
「時間がないというのに。」
タナトスは焦る。
じりじりと胸が痛む。
(この痛みは、何?)
苦しさを悟られないのに必死だ。


