“面白い”というように口角を上げた。
「これまでの研究データでは、その鎖はこの世の素材ではない強力な神力を持つもの。髑髏は人間のものだと解っている。」
「あら、仕事が早いじゃない。」
タナトスは馬鹿にしたように笑った。
「そして、神力の分析結果が悪魔と一致した。」
「悪魔?貴方達、悪魔と会ったことがあるの?」
「悪魔退治のための組織だからな。」
「あぁ、そっちのか。」
夢魔のことなのだと悟り、呆れ顔をした。
「それは“夢魔”と私達は言うわ。」
「一節ではそんな呼び名もあるな。」
藍畑はどうでも良さそうだ。
「ホンモノの悪魔はそんな生ぬるいものじゃないわよ。」
その呟きは藍畑の興味を惹かなかった。
「それで?私を悪魔と言いたいのかしら?」
「……いいや。それにしては、それ以外の成分がある。」
藍畑は言う。
「血液成分は異なり、悪魔……夢魔の体液とは違う。そもそも、夢魔は人間に取り付かない限りは体液がない化物だ。」
「そう。」
「血液成分の九割は過去データと一致した。」
そう言ってレイを見る。
「被検体・9925号。」
レイが僅かに反応した。
しかし、無愛想に黙っている。
「その名は捨てた。」
「データとしては残っている。」
「……チッ。」
藍畑にレイは不機嫌そうに眉を寄せた。
「ミューや、ゼロとかいう者の情報によれば、タナトスというものは死を司る罪人。そして、君はその器だと聞いた。」
「ペラペラとよくもまぁ……」
タナトスはゼロを見た。
「うー……」
ゼロはサタンに隠れる。
「このくらいの情報提供は構わないだろう。天界では常識だ。」
「そうね。人間が知ってどうということはないわ。」
タナトスは言う。
「悪魔と神の力を持つ者。まだまだ研究の余地はある。」
「それは“器”にしたらどうかしら?」
「あぁ」
藍畑はニヤリと笑んだ。
「……契約があるからな。」
ミューを見て言う。
「そう。覚えててくれて嬉しいよ。」
「チィッ。折角の研究を。」
「でも、代わりに得たものは大きい。」
「無論。そうでなければ返してもらう。」
「おや。幼稚な。あげたものを返してだなんて。」
藍畑にミューがくすくす笑った。
「契約?」
タナトスは怪訝そうだ。
「そうだよ。」
ミューは笑う。
「僕もレイも実は本名じゃない。」