「あぁ、よかった。」
「あぁ?」
「ふふふっ、死んだかと思ってね。」
ミューは苦笑した。
そして、現実を確かめるようにレイに触れる。
「馬鹿じゃねぇの。」
レイはミューの手を振り払った。
「何でてめぇらが居るんだ。」
「ん?」
ミューは笑う。
背後に居るサタンは無表情で黙っている。
「ゼロちゃんが、心配してたからさ。」
「……随分と親しげだな。」
「そりゃあ、三日もあればね。とはいえ、自己紹介くらいの間柄さ。」
「?」
レイは怪訝そうにする。
「あれから、三日経つんだよ?」
ゼロはタナトスを見て、レイを見た。
辺りを見回せば、器具があり、タナトスは隣のベッドに寝ている。
「なるほど。」
(あれは、夢の中か。)
レイはタナトスの方へ歩く。
眠っているタナトスは人形のようだ。
「あんたも、目が覚めてんだろ。」
声をかけると瞼が動いた。
目を開けると、操り人形のように無感情な様子で起き上がる。
「あら。」
レイを認識して、面白そうに目を細めた。
「鋭いじゃないの。」
「バレバレなんだよ。」
タナトスはくつくつと笑った。
「タ〜ナ〜ト〜ス〜〜〜〜!!ふぇええん。」
ゼロはタナトスに抱きついた。
幼児のように泣くゼロにタナトスは僅かに苦笑する。
「おばかさん。泣かないでちょうだい。気色悪い。」
「だってぇえええ〜……」
タナトスは起き上がる。
「っ!」
痛みを感じて胸を押さえた。
「タナトス!?」
「うるさい。」
解らなかった。
(この痛みは何?)
疑問を自身へ向ける。
ケタケタと誰かが嗤う。
「煩い!!」
怒鳴ると、周囲のガラス材や器具が割れた。
「——っ、ふん!」
不機嫌に立ち去る。
その行方を研究者が塞いだ。
「君は何者か、調べさせてもらう。」
「何よ。」
タナトスは研究者を睨む。
「藍畑宏次朗という。宜しく。」
作られたような気味が悪い笑みを浮かべる。
「人間と馴れ合う気はないわ。」
「おや。助けられた者は恩返しをするべきではないかね?」
「ははっ、そんなマトモな奴に見える?」
「そうだな。バケモノ。」
「解ってるじゃな……」
そう切り返す前にゼロが横を通過した。
藍畑を思いっきり殴る。
その姿は女性のものだ。
「タナトスの悪口を言わないで!」
膨れっ面で拳を握り締める。
少し驚いた様子で藍畑が笑う。
「見る者がどう見るかで姿を変える存在……研究通りだ。興味深い。」