そう思考したと、思う。

意識が消えた。

目覚めると、暗い場所に居た。
周りには、何本もの巨大な白い氷柱がある。
足元にドロリとした感触がする。
見れば、赤い液体があった。
それが血液であるとはにおいで解った。
足裏に感じるゴツゴツした感触は恐らく骨だろう。
(ここは、どこだ?)
見渡せば、氷柱の上に少女が居た。
少女の足元の氷柱の周りに白い鎖が纏わり付く。
その下を這うように骸が血だまりから手を伸ばす。
「————来たわね。」
少女は目の前に静かに飛び降りる。
ふわりと着地すると、地面が着地点から広がるように血液が骸骨の山へと姿を変えた。
そして、骸はタナトスの足を掴む。
「貴方が来ると思っていたわ。差し詰め、あの泣き虫に泣きつかれたのでしょう?」
「チッ……」
レイは不機嫌そうにした。
「奴らが気に入らないからこうしただけだ。」
「研究の邪魔したのね。ふぅん。」
「何で知っているんだ?」
「私の身体を調べている、と、ここからでも解るわ。死んではいないもの。」
タナトスはニヤリと笑む。
「此処は私だけの世界。永遠に変わらない時の流れ。冷たい大地。」
「随分と悪趣味だが。」
足元を見てレイは言う。
「そうね。これが、私の咎。」
そう言って、骸骨を掻き集めた。
露になった地面は純白の氷だ。
しかし、それも直ぐに髑髏で埋まった。
「咎を無くすことは出来ない。」
そう言ってガラガラと音を発てて髑髏を落とす。
「貴方も、そうでしょう?」
そう言うと、氷柱を見る。
映ったレイは幼い姿で泣いている。
「うっせぇよ。」
目を逸らし、舌打ちをする。
「咎だぁ?んなもん関係ねぇ。俺は楽しいから殺すだけだ。」
「ふふふっ……」
タナトスは嗤う。
周囲の氷柱にレイが映る。
血塗れで笑う姿、憂う姿、泣く姿、怒る姿……
「貴方は、どうして泣いているのかしら。」
「泣いてねぇよ。」
レイは氷柱を拳で叩いた。
脆く崩れ、欠片が音を立てて落ちる。
欠片に自分が映る。
嘲笑われた気がした。
「いつまで、目を逸らすのかしら。私には関係ないことだけど。」
そう言うと、レイに触れる。
「貴方の力、借りるわ。」
「……チッ。」
その瞬間、闇が彼を包んだ。

「——イ、レイ!」
聞き覚えがある声がする。
見れば、ミューが呼んでいた。
ここは、ベッドの上らしい。
「……んだよ。うっせぇ。」