大罪

「お願いを聞いてもらうには、ちゃんと相手を理解しなきゃって……思った。」
「そうかい。」
「だから、考える。」
「くだらねぇ。偽善者が。」
レイはニヤリと笑んだ。
「俺は楽しいから戦ってんのさ。」
そう言うと大声で笑う。
「教団で俺が何と呼ばれてるか知ってるか？」
“教団”とは、ゼロから見て目の前にある建物の中にある組織のことなのだろう。
エクソシストを中心に様々な役割を持った者達が居ると情報がある。
「“破壊者”……だぜ？」
愉快そうに笑った。
「おもしれぇだろ！全てを破壊し、殺す。楽しくて仕方ないね！！」
レイは狂ったように笑った。
すると、声がした。
“Nun schlafen bitte. （さぁ、眠りなさい。）”
見ると、ゼロが手を組んで祈っている。
辺りに光が溢れる。
ミューは目を細めた。
“Ewige Paradies （永遠の楽園）”
ぽつぽつと光が降り注ぐ。
抉れた大地が戻り、草木は綺麗に色づく。
“Die Seele nie gespeichert werden （救われない魂に）”
祈りの応えるように光は癒し続ける。
“Fragt. Bitte geben Frieden.（どうか、安らぎを与えてください。）”
「何のつもりだ。」
レイは怪訝そうだ。
“Fur Sie. （貴方のために。）”
ゼロは柔らかく微笑んだ。
“Ich weiterhin zu beten.（私は祈り続ける。）”
そう言い終わると地面にへたっと座り込む。
「これで、いい。いい、の。」
祈るように手を組んだままで言った。
「タナトスも、貴方も……」

救われればいい。

そこから先は言ったかどうかは定かではない。

ただ、目を閉じていたことは確からしい。

「口ほどにもねぇな。」
目覚めると気味が悪いほど黒い部屋に居た。
壁も
天井も
床も
全てが黒かった。
「ここは？」
「教団だ。」
レイは無愛想に言った。
「マスターが君達を歓迎したからね。」
ミューは苦笑した。

——遡ること少し前。
ゼロを守るようにサタンは前に立ち塞がったままで対峙していた。
すると、建物の中から、男がやってきた。
『ミュー、レイ。』
威厳ある風貌の男は名前を呼ぶ。
レイは舌打ちをしながらも男を見た。
『はい。マスター。』
ミューは跪く。
『何の騒ぎだ。』