大罪

そう言って、足で地面を蹴った。
衝撃波はゼロを襲う。
サタンがゼロの前に立ち塞がった。
「厄介な能力だ。」
レイは舌打ちをする。
攻防を繰り返し、サタンはレイとの距離を詰めた。
「チッ」
レイは素早く後退る。
（速度を倍速にしても、奴に触れられれば無効化される。）
サタンは容赦無く距離を詰めて片腕でタナトスを支えながら、もう片方の手でレイの腕を掴んだ。
そして、レイの身体を地面に叩き付ける。
“ゴッ！！”
鈍い音を発てた。
（……っ、馬鹿力が。）
心の中でレイは悪態を吐く。
右腕を掴まれ、左側を強打したことにより左腕を中心に複数損傷したと状況を理解した。
「てめぇっ……」
恨めしそうに唸る。
「案ずるな。殺しはしない。」
「なめやがって。」
じわりと口の中に鉄の味が広がった。
吐き出すと、地面に血が落ちたのが見えた。
（治癒力を乗算しても、状況は変わらねぇ。）
距離を取り、傷を治癒する。
（あくまで治癒力の活性化。体力や血液量は回復しない。……どのくらい持つか。）
ミューは考える。
だが、諦める様子がないレイを見て手出しするのをやめた。
（……面倒だ。）
レイは苛立ちながら地面を殴った。
地面が割れ、サタンは飛び退く。
「……どうして、一人で生きるの？」
ゼロがレイの方に進んだ。
「貴方は、そんなに寂しい目をしているのに。」
「ハハハハハ！！！勘違いも甚だしいな！」
レイは大声で笑った。
「あんた、俺の何を知ってるんだ？それとも、天から見てたのかよ。」
「……」
ゼロは真っ直ぐにレイの目を見た。
「失うことが、怖いの？」
「無駄なだけさ。」
「守れなかったことが苦しいの？」
「守ろうとも思っちゃいねぇ。」
「……本当は、こんなことしても楽しくないでしょう？」
「愉快だよ。少なくとも、あんたを視界から消し去ることが出来る。」
悲しげなゼロにレイは嘲笑する。
「おねがい。」
「断る。」
レイは即答した。
「俺を惑わすつもりか。残念だったな！」
そう言うと、足で複数の小石を蹴飛ばした。
小石はゼロに襲いかかる。
白い影が小さな身体を守る。
「…………ううん。考えたの。どうして、お願いを聞いてくれないのか、貴方はどんな気持ちなのか。」
「作戦でも考えてるかと思えばくだらねぇ。」
「うん。そうだね。」
ゼロは苦笑する。