駅の待合室に入って切符を買い、それを改札口に通す瞬間だった。


手放そうとした手を、小春がぎゅっと握りしめて離さなかった。



不思議に思った榛名が屈むと、小春は入口の方向を指差した。



「あきひとくん、まだいるよ」



榛名は目を見開いた。



別れた地点で、三浦がまだ立っていたのだ。


こちらに気付いて、驚いたような顔がすぐに綻ぶ。


その変化に、鼓動が忙しく響きだした。



たくさんの人が行き交う駅の玄関口で、立ち止まっているのは、買い物袋を両手一杯に担ぐ男性。



榛名はその彼にだけ、心を震わせていた。