母の職場に父が訪ねてきたことを知らされた。


無一文になったような、ぼさぼさの髪と無精髭、文字通りやつれた姿でやって来たという。



幸い営業で外に出ていた母が出会すことはなかったのだが、当時の住所が知られるのも時間の問題だった。



たった3ヶ月通った学校の、最後の登校日。


ガキ大将と手下たちの申し訳なさそう顔を横目に、俺は教室を出た。


夕暮れ時、その足取りは重かった。


転校すると決まった時に、真っ先に浮かんだのはハルだった。


彼女とお別れをしなければならないのだ、そう言い聞かせると気持ちは底無しに沈んでいった。



ついにその日がやってきてしまったのだ。


これほど公園に行きたくないと思った事はなかった。



けれども足が進む以上は、時間は掛かれど目的地に辿り着いてしまう。


ハルの姿はまだ無かったので、俺はブランコに身を預けた。



地に爪先を付けたまま、ゆらゆらと漂って、彼女に伝えるべき言葉を探していた。



でもハルは来なかった。


午後5時の鐘が鳴っても、彼女は姿を現さなかったのだ。