「あれ?前にいるのジン先輩じゃん。あの人って、案外カッコいいよね」
彼女は今気づいたと言わんばかりに、前を指差しながら言った。
そこには、彼女の言葉通り彼の後ろ姿。
ジンは私がスズちゃんに絡まれている間に追い越して行ったみたいだ。
全然気づかなかった。
彼とは少し距離が空いていた。
「そ…そうだね」
無邪気に話す彼女を見て、私は苦笑いしか出来ない。
彼女は私と彼が一緒に暮らしていることは知らない。
学院の生徒、誰も知らない事実。
ジンを見かけるといつもこのようなことを言うので、私は曖昧な返答しか出来なくなってしまう。
(死んでも一緒に暮らしているなんて言えないよ…殺される)
私は心の中でそう呟いた。
「ま、ユウキの可愛さには負けるけどねん」
彼女は私の髪の毛を指先で弄んでいる。
そして、あろうことか、頬ずりまでも…っ!
「この長い髪とかぁ…この小さな顔とかぁ…この細い足とかぁ…ふふっ」
全身を舐めるように見てくるその視線に、背筋を悪寒が奔る。
さっき言った殺されるという言葉の対象者は、私のことではなく、ジンのことだ。



