それに、学校ではジンとユウキは互いに他人のふりをしているので、これはこれで都合がいいのだ。
学校が近く、同じ制服を着た人が多くなる道に入る直前に、ユウキが先に行くというのがいつもの流れとなっている。
の、だが。今日だけは少し違った。
ユウキが先に行こうとしたら、ジンが引き止めたのだ。
潜めた声で彼は告げる。
「今日だからな」
突然話しかけられて、主語も何もない大雑把な言葉に。
ユウキはたいして不信感を抱くことはなく、ただ悲しげな顔を浮かべていた。
「…うん。わかってる。…だって、そのことを朝考えていたから」
最後の一言は誰にも届くことはなく、静かに空へ消えていった。
「それじゃ、先行くね」
短い会話を交わした二人の距離はしだいに開いていった。



