本当は大丈夫なんかじゃない…


この学校にはたくさんの友だち、たくさんの思い出がある。


そんな大切な学校、大切な町を離れないといけなくなるのはとても悲しい。


いつの間にか愛着が湧いてしまっていた。



でも、彼にはそんな気持ちを知られたくなかった。


今日のことはずっと前から来ることは分かっていたし、心も決めたつもりだった。


だけど、いざその時が来たと思うと決心が揺らいでしまう。


それでも、今日はぎりぎりまで人でいることが出来た。


そのせいで、たくさんの人が傷ついてしまったけれど。


人でいられた。


それが唯一の救いなのかもしれない。



だったら、最後は誰にも秘密を作らないことにしよう。


皆に軽蔑されてもいい。


化け物と言われてもいい。


秘密だけは作りたくないから。


忘れてしまう記憶だけれど。



それに隣にはジンがいる。


それを思うだけで、不思議と気持ちは楽になるんだ。


そして、あの過去を払拭するためにはこれは絶対に避けられないことだから…



さあ、この小さな一歩を踏み出そう…



「行こう」