数分後、体格の良い男が嬉々とした表情を見せると、次の瞬間には野次馬と化していた生徒たちの前に立っていた。


その姿は誰にも捉えられることなく、一瞬で移動したように見えた。


見えたんではない。


実際にそうなのだから、男は瞬間的に移動をしたのだ。


そんな人間離れした動きを目の当たりにした生徒たちは、一歩また一歩と後ずさる。



その男は大きくて太い腕を伸ばし、近くにいた男子生徒の腕を掴むと。


大きくふりかぶり投げ飛ばした。



ーーズドーン…ッ!


投げられた男子生徒はたくさんの生徒を巻き込み。


昇降口へと吸い込まれるように吹き飛んでいった。


一瞬の出来事に誰も反応することは出来ず。


その現象を引き起こした男の近くにいた生徒たちは恐怖に怯え、その場から蜘蛛の子が散るように逃げ出した。



この男の行動が出来事の発起となった。


校庭の集団は行動を起こし始めた。


ある者は先生を相手に。


ある者は逃げる生徒を追い。


ある者は校舎の中へ。


そして、ある者はその場で傍観を決め込んでいた。