リアルフェイス【短編】


下足室でスリッパに履き替え、通いなれた廊下を通って、誰もいない自分のクラスの教室にたどりつくと、自分の席に座りながら長い息をついた。


ここまで逃げ出した理由――それは視線だった。


鉄平に怒鳴られる前に認識した、あたしたちを遠巻きに見る目。


それをあらためて再認識し、そのあまりの多さに正気ではいられなくなってしまったんだ。


そりゃあね、公衆の面前で「好きだ」「嫌いだ」なんて話を始めれば、見えてしまう側としては気になってしかたない。


ましてや、あたしたちの場合は感情が高ぶって、かなり大きな声を出してしまっていたと思うから、余計にだよね。


さっき見た、たくさんの人を思い出し、あたしはうつ伏せになって、目をつむった。


一か所にかたまっていた彼のチームメイトがたくさんに、顧問らしき先生。


視界の端にちらっと見えた、うちの学校の緑のユニフォーム姿が数人――これは視界が切れたから数人であって、和くんのチームのようにまとまっていたなら、もっとたくさんいたのかもしれない。


みんな、あたしたちを見ていた。


由実、和くんの学校の制服の子、うちの学校の制服の子たちはかなり離れていたけど、やっぱり見ている気がした。


目もとまでは見えなかったけど、体がこちらを向いていたんだ。