あたしはもう一度顔をあげ、向いに立つ鉄平の瞳をまっすぐ見た。
「あたしね、鉄平には恋愛感情がないから、素の自分をすべて見せられるの。鉄平のことは大事だから守りたいって思うけど、それは友達だから。弟みたいに感じるから」
鉄平は顔をゆがめた後、口元には無理やり笑顔を浮かべた。
「……弟みたいか。わかってはいたけど、きついよ、悠衣ちゃん」
「ごめんね、てっぺ――」
つい、謝罪の言葉が口をついた。
でも、最後まで言い切る前に止まってしまう。
ブルっと下から上に、大きな震えが伝った。
「いやあああー!!」
和くんの手を振り払い、耳を両手で塞ぎ、目をつむって、やみくもに走りだす。
しかし、何も見えないのも怖くて、目はすぐに開けて、地面を睨みつけるようにして走った。
どこに向かえばいいかわからなくて、グラウンドの端で一度、顔をあげた。
校舎が目に入り、目標をそこに定めると、今までで一番いい走りをして、一気に校舎の中へ入った。
サッカー部の練習試合が注目されていたおかげか、校舎のなかは静まり返っていた。



