リアルフェイス【短編】


目の前の和くんの胸に飛び込む。


その温かさには心が安らぐ。


一息つくと、和くんの青いユニフォームを掴んだまま、後ろを振り返った。


傷ついた子供みたいな顔をしている鉄平。


それを見た途端、泣きたくなった。


「……どうして、こんなことするの?」


泣くのを我慢するために唇を強くひと噛みした後、喉から声を出した。


「あたし、鉄平の彼女になんてならないよ? あんな、一方的な賭けなんて、賭けしたうちに入らないし、たとえ賭けに承諾していたとしても、彼女にはならない」


睨むように鉄平を見据える。


「そうだ。俺もあんな賭けは認めない」


声は後ろからして、振り向くように顔を上げる。


驚いたのは、鉄平ではなく和くんがしゃべったからではない。

その内容だ。


「あんなって、和くん、なんで知ってるの?」


和くんは呆れたような顔をすると、あたしの腹に両腕をまわし、頭の上に顎を乗せた。


「賭けの話のとき、結構、大きな声が出てたよ」