リアルフェイス【短編】


ビクッと肩が震え、和くんの腕が弱まる。


少し体を離すと、和くんの斜め後ろに鉄平が立っていた。


その笑顔が怖い。


口は笑っているのに、目はあたしをその場に射止めるようだ。


「勝ち」という言葉で、ハーフタイムに言われたことを思い出した。


『もし、残りの試合時間で、アイツよりも多く点を入れることができたら、俺とつきあってくれ』


さっきとは違う意味で、ドキドキする。


ああ、そういえば、さっき、膝を押さえていた。


唐突に思いだし、視線を下げた。


その先には擦りむいた膝がしら。


たいして痛そうな様子もないし、擦り傷だけかな、と安心したとき、その膝が動いた。


そこから先は、まるで、スローモーションのように感じた。


和くんが振り返り、鉄平を見る。


鉄平はさらに口元を歪ませて笑うと、一歩近づく。


和くんの腰から離れたあたしの右手首を掴む。


ここからは不思議とあっという間で、気づくと和くんから二歩くらい離れた位置で、後ろから鉄平に抱きしめられていた。