リアルフェイス【短編】


「んー、ちょっと痛い。アイツに乗っかかられて、痛めたみたい。でも、たぶん骨まではいってない」


(ひゃあっ)


相変わらず、彼の息でくすぐられて、肩をすくめた。


身をよじって、彼から離れようとする。


だけど、和くんの腕の力が増すばかりで、離してくれなかった。


「もう少し、このままで」


「和くん?」


なんだか彼の様子が変で問いかける。


だって、周りにはチームメイトやギャラリーがいるのに、どうしてこんなにも抱きしめてくるの?


まるで、何か大きな不安があって、それを和らげるために甘えているみたい。


ケガをしたから?


それって、そんなに不安になる?


むしろ、いつもの彼なら、笑って大丈夫だよって言いそうなのに。


何か、他に理由がるの?


それは何?


彼の胸のなかで考えこんでいると、「悠衣、俺の勝ちだよ」と声がした。


それは、決してくすぐったくない声。