それを見た瞬間、頬が緩んだ。
きっと今、すごい笑顔になってる。
自分の口が大きく逆三角形を形作っていることがわかる。
まだシュート体勢にもなっていないくせに、勝手に和くんのゴールを確信してしまったとき、どこからともなく小柄な選手がゴール線上に飛び出してきた。
(……鉄平!?)
小さな体ではあるけれど、その俊敏さと逆に小柄をいかした動きでディフェンダーを突破することから、和くんと同じフォワードを任されている鉄平。
本来なら、ディフェンダーがカットしたボールを受けるために、ボールを深追いしないはずの鉄平がゴール前まで下がって和くんと対峙していた。
もちろん、敵のゴールを阻止するためなら、フォワードがゴール前まで下がることはあってもおかしくないのかもしれない。
ただ、鉄平は体格や力では敵に勝てないため、動きでカバーするから、人より運動量が多い。
できるだけゴール前はディフェンダーを信じて任し、いつでも速攻をかけれる位置にいながら、そのあいだにちょっとでも体力回復をはかってることが多い。
そう考えると、今日の鉄平はなりふり構わないくらいに真剣なんだと思えてしかたなかった。
和くんはすぐにボールを取られるわけではないけれど、胸がざわつきだす。



