リアルフェイス【短編】


見た目はどう見ても鉄平だけど、双子だとか、二重人格だとか言われたら、今なら信じると思う。


「あ、あたしは――」


そんなことできない。


そう言おうと思ったのに、鉄平は最後まで言わせてくれなかった。


「とにかく、そういうことだから。勝ったら、おまえをもらうかえら」


そんな捨て台詞を残して、鉄平はみんなの元へ駆け足で戻った。


あたしは呆然とその背中を見ていた。


頭が、心が追い付かない。


もし、和くんが点を入れることできなかったら、あたしはどうなっちゃうんだろう。


「悠衣、大丈夫?」


その声にはっとして、右横を見ると、由実が心配そうな顔をして立っていた。


「うん」


平気、気にしない。


そう伝えるために、わざと笑顔を浮かべながらうなずいた。


でも、本心は違う。


だって、和くんにとってはこれは単なる練習試合で、負けても構わないはず。


鉄平と意気込みが違えば、和くんのほうが不利になっちゃうよ。