リアルフェイス【短編】


いや、正確には会うとは言えない。


ただ見ていただけ。


彼のことをこっそり応援していた。


いつしか、鉄平を応援するためではなく、彼を応援するために練習試合を見に行ってた。


だから、2年になって最初の試合のあとで彼に呼び止められ、告白されたときは迷いなく受け入れていた。


それが、あたしと和くんの始まり。


     *


考えこんでいたあたしはホイッスルの音で現実に引き戻された。


見ると、鉄平がゴールを決めたところだった。


「あら、先制点は鉄平くんだったね。見て、彼氏くんが悔しそうよ」


「え?」


言われて和くんを探すと、珍しく、とても悔しそうなそぶりをしていた。


そして、まっすぐにボールを見据えて、追う。


そんな彼の姿にドキドキする。


いつもの点を決めたり、アシストを決めたりで嬉しそうな顔の彼も素敵だけど、こんな彼もカッコいい。


あたし、重症なのかな。