ふと、視線を下にやると、彼の両手が微かに震えていることがわかった。
鉄平相手だと、意地悪な言動になってしまう。
でも、この人にはそんなんじゃなく、心から励ましたいと思った。
がんばってほしいと。
だから、あたしは彼の手を自分の手で包んだ。
「あたしが応援してあげる。あなたは大丈夫よ。力を認められてるから、試合に出れるんでしょ? 落ち着いて、いつもどおりに」
「応援って、君は対戦相手と同じ高校なのに?」
「そんなの構わないわよ。そりゃ、あんまりおおっぴらにはできないけど、こっそりとね。どうせ応援しょうと思ってたヤツは試合に出ないみたいだし」
「そっか。ありがとう、がんばるよ」
そう言って彼は白い歯を見せて、笑った。
それを見て、あたしの胸はドキンと音を立てた。
それがどういう意味か、まだその時点ではわかっていなかったけれど、試合でボールを追う彼を見ていると、頬が緩んだ。
その後も、何度か練習試合で彼と会うことになる。



