リアルフェイス【短編】


男は青い顔をしていたから、変にぶつけてしまったかと思い、慌てて謝った。


「いや、大丈夫」


「大丈夫って、顔色が悪いわ」


相手の顔を覗きこむ。


いつもは鉄平を見下ろすから、この人を『見上げて』ドキドキした。


「ああ、カッコ悪いな。これはその、緊張かな」


「緊張?」


「練習とはいえ、高校に入ってから初めて試合に出るんだ」


彼が祥瑛の生徒で、選手であることはユニフォーム姿からわかった。


それでも、意外に思えた。


あたしよりも軽く10センチは背が高くて、ちゃんと男に見える彼。


鉄平とは比べものにならないくらい、しっかりしていそうだったから。


初めて試合にってことは、1年生か2年生なんだろうけど、3年生って言われても信じるかもしれない。


と言っても、年齢よりも子供に見える鉄平を基準にしてるから、余計にそう思うだけで、この人が大人っぽいわけではないのかもしれないけど。