リアルフェイス【短編】


何よりもサッカーが好きなくせに、ボールよりもあたしを見てどうするのよ。


でも、それがすごくうれしくて、胸に明かりが灯った。


遠くてよくわからないけど、和くんはきっと白い歯を見せて笑っている。


彼に出会ったあの日のように。


     *


1年に入ったばかりの頃、あたしはいつものように鉄平に泣きつかれて、祥瑛との練習試合を見に来ていた。


いつも弱っちくて頼りない鉄平だけど、意外と運動はできる。


体が小さいせいか、すばしっこいんだ。


そんな鉄平は小学生のころからずっとからサッカーをやっている。


だから、鉄平が試合に出るのは当たり前だと思い、鉄平に応援を頼まれたこともあって、見に行ったんだ。


それなのに、応援に来てみれば、鉄平は試合に出れるかもわからないという。


出るとは限らないのに不安そうに騒いでいるのかと呆れてしまい、帰ろうと思って、早足でグラウンドから出ようとした。


急に体の向きを変えてしまったせいか、誰かにぶつかってしまった。


「ごめんなさい!」