次の日。僕は、病院に来ていた。
勿論、桜依に会うために


病室の前に行くと慌ただしかった


看護師や先生が出入りしていて
ただならぬ雰囲気だった


「桜依…?」


この病室には、桜依以外誰もいない

桜依の顔は…肌色が
残っていないほど真っ白だった。


て、ことは…

「嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ!!」


想像したくない結末に
僕の頭は考えていく


そんなはず無い。だって…
だって僕は昨日約束したんだ


─いろいろな所に連れていくって─


僕は、約束したばっかりなんだ…!


でも…僕の願いは届くことはなかった


「11時21分…ご臨終です」


やめてよ…そんな言葉、聞きたくない!!


僕は…僕は…
君さえ生きていてくれれば
それで良い。それで良かったのにっ!


「紫雲君?」


「那代さん…」

桜依の母だ
毎回お見舞いに来るから覚えられていた

「これ…」


そう言って渡してくれたのは
一通の手紙だった






  紫雲へ




これを読んでいるということは
私がもうこの世に
居ないと言うことだね。


よかった、書いておいて。
書かないで後悔したくないもん。
…本当はね、私…秋まで
生きれなかったの。
今年の冬に”余命半年です”って
言われてたんだ。
けど…紫雲と出会って
2ヶ月長く生きたんだ。すごいでしょ?


先生にも
”このまま良かったら治るかもね”
って言われたんだけど
…分かってたんだ…もう”長くない”って


紫雲、貴方に会えてよかった。
最後の最後で神様が
”出会い”をくれたのかも


一目惚れ、だったのかな。
紫雲と居ると胸がドキドキして
普通じゃ居られなくなるの。
この気持ちが”恋”と分かるまで
時間はかからなかった。
気付いたときには、もう遅くて…

ごめんね、紫雲…ごめん。
悲しい思いさせて、辛い思いさせて
本当にごめんなさい。
貴方の隣にずっと居たいと思って
ごめんなさい


私のことは、忘れてください。
今までありがとう

               
               
               
            桜依




文面はそこで終わっていた


「ん?」


一番最後の段にうっすらと


─紫雲。貴方を愛しています─


と書かれていた


「っ!!」


桜依の手紙を読んで、出ていた涙が
止めどなく溢れて、滝のように流れていく


「僕も…愛してるよ、桜依…!」


手紙を胸に抱いて、
その場に僕は泣き崩れた