きっかけは単純。
ただ、雄大の前のトップがあたしの兄で、雄大がトップになるから幼なじみのあたしが女神をしろと言われたから。
兄…夢歌は人に面倒な事を押し付けて去った。夢歌の女神だった彼女と共に、自分だけ幸せになるように去った。
自分勝手で何よりも彼女と自分の幸せを優先させる夢歌が、あたしは昔から嫌いだった。あんな男、二度と戻って来ないでほしい。
…夢歌のせいで、あたしは雄大の女神なんかになってしまったんだから。
あたしが女神をすることに、雄大は反対しなかった。…それがまたムカつく。
だって女神は本来ならトップが望んだ女が就くものだから。
あたしは別に、雄大に望まれたわけじゃない。
それに、雄大には………。
「そーいえばさぁ、ひとみんてみーちゃんの事は名前で呼ばないよね?」
一夜の言葉に眉をひそめる。
「あんたみたいに変な名前で呼ぶよりマシでしょ。…それに、東宮って苦手なんだよね。あいつのあの目、何か落ち着かなくなる…あ。」
…ヤバい。
さすがの一夜も気まずそうに顔を逸らしている。こいつのせいだっていうのに。
あたしは背後に立っているであろう男が想像出来て、ゆっくりと振り向いた。
…やっぱり。
こちらを見つめる深い藍色の瞳は、いつものように激情が微かに伺える。
あたしはこの瞳が、苦手だ。

