次の日は、朔弥と朔乃の家で勉強会と称し集まることになっていた。


朝飯の席でばあちゃんにその予定を告げると、少し妙な間を開けてからばあちゃんは言った。


「……しっかり勉強、すんねんやで」


ばあちゃんに勉強のことを言われるのは初めてだったので、少しとまどったが、当然と言えば当然だ。
来年は受験生になるんだし。

言い得ない違和感を無視したまま、俺は朔弥たちの家へと向かった。





「あっちいー……」


朔弥はうちわをせわしなく動かしつつ、扇風機の前に座り込んでいる。


「そうか?」


縁側に座っていると、風通しがよくて気持ちいい。風鈴とすいかとせみの声。爽やかな暑さだ。


「そりゃ、都会とは比べ物にならないよな。俺も何度か、親戚の家に行ったことある」

「朔弥が都会行ったら、溶ける」


朔乃の発言に、朔弥は「かもしれない……」と力なく返事をした。


机に教材を広げているのは、朔乃と慧だけだ。宿題の4分の1は既に終えてあるらしい。


「俺たち、何しに来たんだよ」


苦笑して慧が言う。
俺は宿題の冊子を取り出し、ぱらぱらと眺めた。

多い。少しばかり残っていたやる気が、一気にこそげ取られてゆく。


「まー、まだ2日目じゃん。って言ってるうちに、毎年終わるんだけどな。夏休み」

「朔弥が宿題終えるの、見たことない」

「さくがそう言うってことは、今まで1度もないってことだな」

「まあまあ」


気楽に笑って、朔弥はテレビのリモコンに手を伸ばした。