選んだ真珠は簡単に加工をしてもらった。
真珠は皮脂が付くと表面が酸化して悪くなっていってしまうらしいが、加工をすれば大丈夫だそうだ。


それから俺たちは海辺で遊び、ながじぃから真珠にまつわる昔話や海の生き物についての知識を伝授され、あっという間に帰路についた。


「マーブルだ」


トラックの荷台で、大きな揺れをものともせず慧は言った。


「えっ、どこ?」

「ほら、ここ」


慧はもらった真珠を指し示し、隣の朔弥に、ピンクと白が混ざってる、と説明した。

朔乃は荷台にくくり付けられた手すりにひじをつき、後ろを向いて道路に視線をやっている。


一日海辺にいて疲れはしたが、この時間ならアクアに会いに行けると思うと、精神的には少しも辛くなかった。


ポケットから真珠を取り出し、夕陽にかざして見た。
少し暗いが趣きのある朱色に真珠は染まった。

こうすると本当にハート形にしか見えない。


その時、トラックが大きな窪みを乗り越えた。


「わっ……」


大きな揺れで、真珠が転がり落ちてしまった。

球形でない真珠は不規則に転がり、朔乃のサンダルにあたって動きを止めた。

朔乃が気づき煩わしげに手を伸ばす。


「ごめん――」

「しょーご」


朔乃は真珠を持ったまま俺を凝視した。
黒い瞳に、くっきり俺が映っている。

俺が広げて出した手のひらの上で、朔乃は真珠を指から離した。


「ありが……」

「しょーご、ばか。鈍感。嫌い」

「は……」


いきなりのことに俺は口を開け放ち、くるりと向けられた朔乃の背中を見ていた。

視界の隅で、慧が口の端を動かした。


『言った通りだろ』


そう、言われたような気がした。