「翔瑚はあたしのこと、どうでもいいんだ」


どうでもいい、というのとは違う。

連絡しなかったのは、ただ俺が意気地なしだっただけで。

この日が来るのを先延ばしにしていたんだ。


「そーゆーわけじゃ……」

「じゃあなんで……あたし、待ってたのに」


夏帆の綺麗な顔が歪む。
哀しげに伏せたまつげが震える。


夏帆は男心を捉えすぎている、と思う。

こんな表情をされれば、俺が切り出すべき話をしたあとの顔を想像してしまい、切り出すことを躊躇せざるを得ない。


傷つけたくない、という言い訳は、本心から出たものでもあるのだ。


まだ、決心がついていなかった。

結局心の中で先送りが決定された。


「ごめん、連絡しなくて。今度は俺がするから。ごめんな」


夏帆は表情を変えた。

目いっぱいの愛嬌が詰め込まれた笑顔だった。