そして今、同じ空間を共有している――女の子。

ちらりと横目に見やった横顔は、鼻筋から顎にかけてまでが一点の歪みもない1本の線で完成していた。

白い光が直接あたった亜麻色は、金色にも似た色に光る。

そしてよくよく見れば、体の線が物凄く細い。この大海原を泳ぎ回っているとは思えないほど華奢な体だった。


何より彼女を彩るものは、瑠璃色とエメラルドだ。

どうしてもこの2つには目が奪われ、ともすれば言葉さえも奪われてしまいそうだった。


おもむろに、彼女は視線を上げた。

慌てて視線を逸らそうとしたがその前に彼女が気分を害したようでもなく口を開いた。


「そうだ、名前教えて!」


真っ直ぐな瑠璃色は、俺を捉えて離さない。


「風霧、翔瑚」

「カザキリショウゴ……いい響きね。潮風みたい」

「カザは風って字なんだ」


内心すごい、と思った。風なんて字は知るはずもない彼女は、響きのみから名前の意味のようなものを感じ取ったのだ。


「そっちは?」

「わたしはアクア。アクア・シェルラインよ。本名は、もっと長いわ」

「アクアか……」


アクア。口の中で繰り返した。

英語で水。ぴったりだと思った。ただし浮かんだのは、普通の水なんかではなくて、少しの濁りもない純水だ。


「うん。すごい、ぴったりだ」


彼女はにっこりと微笑んだ。
恐らく、自分でもその名前が気に入っているのだろう。


アクアは、繊細で透明な薄いガラスをイメージさせた。
丁寧に扱わなければ、簡単に壊れ、二度と戻らなくなってしまいそうな……

そんな儚さが、アクアにはあった。