言葉にしてみて初めて、本当にそう思っていたらしいと実感できた。


島へ来てたった4、5ヶ月の間。
与えてもらった言葉は多く、与えることのできた言葉は少ない気がしてならない。

たくさんのことを言って言われて成長し合えていたらいい。
言葉にして伝えるのが難しい時には、隣にいてくれるだけで。
そこに誰かがいてくれることで、心強く感じられて、泣きたいほど嬉しい時がある。

ただ存在して、言葉を交わし合うことさえできれば、不可能の世界は無限に縮んでいく。


「その通りだ、と、私は思うよ」


そしてまた、ここで出会った島の人間と交わした言葉が、ひとつの大きな力になる。


「……やっと」


長い人生で考えれば、ほんの一瞬のことだったかもしれない。
ふらりと思いついて、何の期待も持たず移って来た場所で過ごした時間。


「けがをしてから得られたものは、もしかしたら、失ったものよりも随分大きかったんじゃないかと、思えるようになりました……」


1人では辿りつけなかった考え。
ここに到着した今、失ったものを取り戻す努力をするのも忘れ、何よりも先に逃げを選択した過去の自分を、許す時が来たのかもしれない。