あくる日、俺は自分の部屋でベッドに寝転がっていた。


時刻はいわゆる竜の下刻――午前10時前だった。
アクアが言っていたこの制度は、考えてみれば、ばあちゃんが当時の王に伝え、それが国に広まったということで辻褄があった。
こたえはすぐ傍にあったのだった。


真珠の箱は、もらったまま机の上に置いてあった。

上半身を起こしてあぐらをかき、ベッドの上からそれを見つめる。


ひいらぎ岬。
ばあちゃんとティート・シェルラインの場所で
同じように、アクアと俺の場所。


……行こう、と、踏ん切りがつかなかった。



もう一度ばたりとベッドの上に倒れる。

ばかみたいだ、と思う。矛盾に気づいていないわけじゃない。
あれだけのことを言っておいて、実際そのものとその事態を目の前にすると、会ってしまうのが怖いのだ。


何かきっかけが必要だった。足りない何かを補ってくれる、ものが――。


目を閉じると世界がぐるぐる回った。
回って、回って、天も地も、陸も海も全て、反転して、転げ落ちて、転げ上がって、いっしょくたに混ざってしまえばいい。

世界はひとつで、同じ色をしていて。
何かと何かを分け隔てるようなものは存在しない。

そんな世界はつかめそうもなかった。
つかんでも指の隙間からこぼれ落ちてしまいそうな、そんな世界を、まぶたの裏に見ながら俺はいつまでも、自分の部屋で窓も開けずに、動かずにいた。