7粒の真珠は本当に、アクアが言っていたくらいの大きさがあった。天然にできたものであるとは考え難いほど。
生命の神秘というものなのだろうか。


「彼は、忌まわしく、しかし大切な家宝であったこれを、わたしに託した。

陸にあげてしまえば、この家宝の秘密を知る者は手が出せないし、そもそもこれで、この家宝がある場所を知っているのは、この世に彼とわたししかいないのだ、と。

彼は悲しい笑顔でそう言った。そして加えて言った。同時にこれは、せんべつの品になると……。彼は既に、国のために身を捧げる決意を固めていたし、臣下たちも正しい判断を失った者ばかりとなってしまった以上、国王であり続けられるわけがない。
元の暮らしに戻れるかどうかすら、危ういところとなってしまった。

そんな状態でこれ以上わたしと会っても、わたしを悲しませるだけになってしまうと、彼は言った。


彼がどんなに理屈の通ったことを言ったとしても、わたしは納得できるはずがなかった。
だけど、納得する以外に道はなかった。
彼は人魚で、わたしは人間やから。

わたしたちが違う生き物であると、違う世界で生きる者同士であるのだと、思い知らされた瞬間やった」


ばあちゃんは畳の上にふたを置き、真珠の箱をひざにのせた。

少女の気配を宿した眼差しを向ける。
瞳の奥では、数十年前の光景が繰り広げられているのだろう。


耳には、潮騒が届いていた。
海はいつどんな時も単調に同じリズムを刻む。
だけどきっと、あの日とは完全に違った音。
辛い選択をした彼女にとっては。



静かに、ばあちゃんの記憶が今へ辿り着くのを待った。