「彼は、ティート・シェルラインは決断した。
例え全ての責任と、全国民からの恨みが自分に降りかかってくることになろうとも、その手で7つ真珠の首飾りを、誰の手も届かない所へ葬り去ってしまうことを――」
そこまで言うと、ばあちゃんは畳の間に続いた自分の寝所のふすまを開けた。
タンスの引き出しが軋む音。奥の方を探っているらしい。もちろん見当はついていた。
できるだけ何も考えずに、見ずに、ばあちゃんが戻ってくるのを待つ。
「翔瑚」
ばあちゃんが抱えるように持っていたのは、縦に細長い形をした、立派な桐の箱だった。
俺の隣に箱を置き、ばあちゃんは畳の上にそっと正座する。
「中身は、わかるな」
ゆっくりと頷く。
ばあちゃんは、十文字にかけられた細い紐を解いていった。
いかにも古そうな色に褪せた、だけどどこもほつれていない、麻の紐。それを丁寧に解いてひとつにまとめ、箱に手を添えて薄いふたをふわりと持ち上げた。
「彼の、決断の結果や」
箱の中は輝きに満ちていた。
柔らかそうな布の上に横たわる宝石。
6つは確かに輝きを失っていた。残りのひとつは、中央の、ひときわ大きくうつくしい真珠だった。
その、最後の一粒は、光沢に少しもムラがなく、球全体が均一に光っていた。ぴかぴか光るというのはとは違って、かすり傷ひとつ、にごりの一点もない表面にはつやがあり、しっとりと輝きを放っていた。
これが、7つ真珠。
役目を終えて黒ずんだ6つと、その姿からは想像もできない力を秘めた最後のひとつが連なった、うつくしくも恐ろしい首飾り。
叶える真珠。
フルフィルパール。
シェルライン家の子孫たちが今も探し求めているこの家宝を前に、俺は言葉を失った。
例え全ての責任と、全国民からの恨みが自分に降りかかってくることになろうとも、その手で7つ真珠の首飾りを、誰の手も届かない所へ葬り去ってしまうことを――」
そこまで言うと、ばあちゃんは畳の間に続いた自分の寝所のふすまを開けた。
タンスの引き出しが軋む音。奥の方を探っているらしい。もちろん見当はついていた。
できるだけ何も考えずに、見ずに、ばあちゃんが戻ってくるのを待つ。
「翔瑚」
ばあちゃんが抱えるように持っていたのは、縦に細長い形をした、立派な桐の箱だった。
俺の隣に箱を置き、ばあちゃんは畳の上にそっと正座する。
「中身は、わかるな」
ゆっくりと頷く。
ばあちゃんは、十文字にかけられた細い紐を解いていった。
いかにも古そうな色に褪せた、だけどどこもほつれていない、麻の紐。それを丁寧に解いてひとつにまとめ、箱に手を添えて薄いふたをふわりと持ち上げた。
「彼の、決断の結果や」
箱の中は輝きに満ちていた。
柔らかそうな布の上に横たわる宝石。
6つは確かに輝きを失っていた。残りのひとつは、中央の、ひときわ大きくうつくしい真珠だった。
その、最後の一粒は、光沢に少しもムラがなく、球全体が均一に光っていた。ぴかぴか光るというのはとは違って、かすり傷ひとつ、にごりの一点もない表面にはつやがあり、しっとりと輝きを放っていた。
これが、7つ真珠。
役目を終えて黒ずんだ6つと、その姿からは想像もできない力を秘めた最後のひとつが連なった、うつくしくも恐ろしい首飾り。
叶える真珠。
フルフィルパール。
シェルライン家の子孫たちが今も探し求めているこの家宝を前に、俺は言葉を失った。


