アクアが下半身を海の方へ投げ出してできたスペースに、座った。

ゆるいウエーブの髪があまり濡れていないなと気づく。白い肌も乾いている。
アクアは組んでいた両手を解き、そのまま指先を海水の中に浸した。


「さっきやってたのは、お祈り?」


瑠璃色がこちらを向いて、俺を捉える。嬉しそうなトーンでアクアは言った。


「お祈りだよ。母なる海へ。翔瑚が無事にこの島へ、帰って来ますようにって」

「ああ、そうだったんだ……。ありがとう。おかげさまで」

「よかった。待ってた甲斐があったわ。楽しかった? 生まれ育った場所で過ごすのは」


俺は、大して充実した内容でもない帰省話を、丁寧にアクアに語った。
通じない言葉はたくさんあるはずなのに、アクアとの会話はいつもスムーズだった。


「少しは向き合えたのかな、と思ってる」


ゆるく吹く潮風の中でアクアは顔を向けた。


「母さんにも父さんにも、本当のきもちを聞いて……。2人共、好きなように生きていいと言ってくれた。次に帰る時は、もっと気楽な気持ちで帰れる気がする」

「そっか……」


アクアは微笑んで前を向いた。
一瞬間をおいて、アクアは、頭を俺の肩にのせてきた。