「島での暮らしは、どうだった」


ちょっと変なタイミングで父さんは尋ねた。


「いろいろと、楽だった、かな」

「そうか。やっぱりどうしても私たちは、お前を心配していたが、よかったな」

「楽するために、行ったようなものだったし」

「学校には馴染めたか」

「気のいい人ばかりの島だから」

「倫子も言ってたな。倫子が通ってたのと、同じところだったんだな」

「へえ。それ、知らなかった」


ばあちゃんも同じだったと、確か、夏帆が。
あのどっしり構えた風合いの学校には、3世代にわたってお世話になっているらしい。

もしかすると、ひいばあちゃんも?
その母親も? 父親も?

今まで思いを馳せたこともなかった人たちが、輪郭のぼやけた黒い像となって現れる。


「もう着くぞ」


いつのまにやら、外では小雨が降り出していた。


目の前でワイパーが行き来するのを見続けていて、あまりの単調さに、眠りに落ちた。