荷造りは簡単にすませた。
朝起きて朝食を食べてすぐに要次さんの車に乗り込む。

駅まではおよそ12km。歩く距離ではないので、ばあちゃんが頼んでおいてくれたのだ。


「帰りは、しあさってやな。倫子によろしく。行ってらっしゃい」

「うん。行ってきます」

「翔瑚くん、気をつけて」


ドルルルル、とエンジンの起きる音が、朝の清澄な空気の中に放たれる。


「よく、話してきいや。帰りは待ってる」

「……わかった」


ばあちゃんの真剣な眼差しを受けて、俺は2泊3日の里帰りに出発した。





お礼を言って車を降り、そのままヨット乗りへ繰り出す要次さんに手を振って、改札へ向かう。

列車に乗るのは4ヶ月ぶりだ。
クッションの薄い座席に座り、窓へ目をやる。
来た時とは逆に景色が展開されていた。海、海、山、海、田、海、山、田、。


船に乗り換え、島を去る。遠ざかる小さな離島。人の温かい島。
船を降りると海ももう見られなくなる。山、田、田、コンクリート。

船を降りて最初の電車の終点は、とても大きな駅だった。人がたくさん行き交うのを見るのはどこか新鮮に思えた。
人々の来ている服は鮮やかで、目に不健康だった。

今回は4ヶ月前と逆の、田舎からの転校生の気分だ。